2025/04/14
トランプ関税の影響と習近平主席ベトナム訪問
皆様
猪谷です。
こんにちは。
トランプ関税でベトナムもかなり影響を受けておりますので、先週に引き続き臨時号を発行させて頂きます。メルマガ臨時号のトランプ関税のベトナムへの影響についてお伝えする前に、皆さんにトランプ関税の影響についてアンケートのご協力を。
後段でも記載しておりますが、今回のトランプ関税の影響は既にベトナム国内でも出始めている中で、御社や御社業界で起きていることなどご回答いただけますと動画の内容もより充実しますのでご協力をお願い申し上げます。
https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSfdudhARsfomjDui7hpcVIRDqQIF-VWe1VtiW0SoQptFEQ53A/viewform?usp=header
4月2日に発表されたトランプ大統領による相互関税の影響でこの1週間、株式市場だけでなく世界経済が振り回される1週間になりました。特にベトナムにおいては46%の関税ということになり、この税率を課されてしまうとアメリカ向けの輸出ビジネスは成り立たなくなるということで、株式市場も4営業日連続でほぼ前面ストップ安で約17%ほどの値下がりとなりました。政府としていち早くこの事態に対応するために4月4日夜には世界に先駆けて電話会談を行うことになり、トーラム書記長、チン首相等ベトナム首脳陣がトランプ大統領にアメリカからの輸入品の関税0%受け入れの用意並びに、自由貿易協定の締結を求めたところ、トランプ大統領側の方もかなり好意的にこの申し出を受け入れるという運びになりました。
4月5日からはフック副首相がアメリカ入りし、実務者協議を行うことになったものの、関税撤廃は9日までには間に合わず、ベトナム政府側も何とか45日程度の関税猶予期間を求めるという中で、9日にようやく実務者協議開始にこぎつけたのですが、その日にトランプ大統領より中国を除く特別関税国対象国への関税は90日延期(10%は継続)するという、完全にトランプ大統領に振り回されるような状態となっております。
前回のメルマガでもお伝えしました通り、ベトナムは対アメリカで完全な輸出超過状態であり23年で
輸出1366億USD
輸入131億USD
で差額1235億USDの輸出超過となっており、これは中国2954億USD、EU2355億USD、メキシコ1718億USDに次ぐ4番目(日本は684億USD)の輸出超過額となっております。ただ、自由貿易協定を結んだからといって、輸入額が倍増するかというと、見込みは薄いです。購入可能性のあるものとしては、旅客機、武器、農産物、機械、LNGあたりになりますが、この差額を埋めるのは不可能かと思います。
実務者協議に入る前に、ベトナム国内でもチン首相を座長とした緊急対策会議が開かれていて、その会議での議題などで、アメリカ側がベトナムに何を望んでいるのか?ということも見えてきたのですが、キーワードとしては「対中包囲網へのベトナムの積極参加」です。
特にベトナムに関しては中国の迂回輸出先としてこれまでも中国企業が利用してきたのは事実で、アメリカもこれを徹底して取り締まりたいようです。
早々に電話会談を行ったため、他国と比べてかなり早いタイミングでグリアアメリカ通商代表とフック副首相との実務者協議が開始されたのですが、初回の冒頭にグリア氏の方から迂回輸出についての言及がありました。
https://www.youtube.com/watch?v=q5pfAF1QAeQ
ニュースなどでは貿易詐欺という表現になっているのですが、まさにラベルの貼替え、コンテナ積替えのような、実質メイドインチャイナの品物をメイドインベトナムに変えてのアメリカへの輸出は許さないという姿勢を示しております。
コロナ前にお客様の縫製関係の委託工場を探していた時に、ある中国系工場が他社よりかなり安かった中で、詳細交渉に行った時に、「なぜ、御社はこんなに安いんだ?」みたいなことを聞いたところ、中国で生地を確保して、半製品にしてからこっちに送って云々みたいなことを言ってきて、それではベトナムでの原産地証明出せないのでは?みたいなことを聞いたところ、自分たちは出せる方法知ってるから大丈夫だ、みたいなことを言ってたのですが、今考えるとこれってまさに迂回輸出的な動きをしようとしてたのかもってことなのでしょうね。
具体的にどのように取り締まりしていくのかはまだ分かりませんが、今後の交渉の中で見えてくるのかもしれないので、分かり次第改めてお伝えするようにいたします。
フック副首相からはそれ以外ではアメリカ企業のベトナムへの投資を促進するためのサポートを行うと表明してるのですが、アメリカ企業の投資が増えることで、設備購入などで一時的に輸入は増えるものの、その設備で作られた製品は結局アメリカに輸出されることになるので、貿易赤字はあまり解消しない気がしますが、アメリカ企業にベトナム国内でのビジネスできる機会を提供するということかなと思います。
ただ、既にベトナムでは4月2日以降、アメリカへの出荷ストップや生産の一時停止措置などが発生しております。バリア・ブンタウ省にあるアメリカ向けの下着工場がアメリカからの出荷停止依頼を受け、従業員の半分を自宅休業にしたというのがニュースにも出て話題になっております。また、繊維、木材加工などでは新規の採用募集をストップする動きが出てきており、早期に自由貿易協定がきちんとまとまらないと、不確定要素が多いので、企業が新規設備投資等のリスクを避けようとすることで経済が停滞しそうです。
このベトナムの動きに一番神経を尖らせているのは中国ですが、このタイミングで中国の習近平主席が4月14日、15日とベトナム訪問することが正式発表されました。
https://youtu.be/mswmG5PrVg4
中国側の思惑としては、東南アジア諸国との関係強化による、アメリカへの外交上の孤立を図るものと思われます。世界の覇権国がこれだけ揺れ動いてしまうと、アメリカへの信任が揺らぐのは間違いない中で、東南アジア諸国訪問を通じて、トランプ包囲網をという思惑はあると思います。また、東南アジアとのビジネス促進を通じて、中国そのもののアメリカ依存を下げたいのもあると思います。
そんな中で2025年はベトナムと中国の国交75周年(1950年1月に国交樹立)であり、その関係強化ということで、今回の習近平主席の東南アジア外遊(ベトナム、マレーシア、カンボジア)の最初の訪問国となっています。タイミングがタイミングだけにかなり注目されるものとなりそうです。
ベトナム側もトーラム書記長、クオン国家主席、チン首相、マイン国会議長という4柱と呼ばれるベトナム序列上位4名が会談予定となっておりますので、いかに丁重に今回の来訪を歓迎するのか理解頂けることかと思います。
ベトナムは従来全方位外交(360度外交)と呼ばれるどこか特定の国だけと親しくするというスタンスは取らず、ある種の中立を取ることで上手く世界情勢の中で立ち回ってきたのですが、今回のトランプ関税の一環で、アメリカ側が対中包囲網に加わるように要望してきている中で、緊張関係ではあるものの、大型プロジェクト(ラオカイーハイフォン鉄道)など経済的協力も受けている中国にどのように対応するかというところです。
実際、ベトナムの最大の輸入先は中国であり、2024年も
輸出612億USD
輸入1440億USD
で完全な輸入超過であり、貿易総額が2052億USDとアメリカ(1497億USD)以上に密接なビジネスを行っております。中国から輸入した原料をベトナムで加工してアメリカに輸出するというのは昔からの一つ商流でありますし、実際縫製業界などでは7〜8割程度の原料は中国からというのが今でも続くようです。ただ、前述の通り中国からの輸入品には貿易詐欺と呼べるレベルのようなラベルの貼替えのみ行って中国への輸出しているものも含まれている状態です。
この中国との関係が悪化し、中国からの輸入に強く制限がかかると今度はアメリカ向けの縫製業そのものが成り立たなくなる中で、いかに折り合いをつけるのかが難しいところです。
ただ、トランプ大統領の言うアメリカへの製造企業回帰をということで、アメリカに縫製業や木材加工業が帰ってくるかというと、ただでさえ、人手不足かつ人件費の高いアメリカに縫製業や木材加工業のような労働集約産業が戻れるはずもないというのが実際のところではありますので、対中包囲網で徹底的に中国を叩きつつも、ベトナムのような周辺国とは良好な関係を取って、そこできちんと加工された製品などは関税無しで輸入するというような状態になりそうです。
トランプ関税により、来週以降もベトナムは大きく左右される事態となりそうですので、習近平主席の来訪の結果含めて改めて臨時号を発行しお伝えをしたいと思います。
また、このメルマガ送付を希望されるのであれば、下記URLより登録をお願いいたします。
https://docs.google.com/forms/d/12nccXa-YudtGgrBbkt4jwTReIkZ9vv4YHaK5G13I5Dc/edit?pli=1
今回は以上です。ご覧いただきありがとうございました。
猪谷です。
こんにちは。
トランプ関税でベトナムもかなり影響を受けておりますので、先週に引き続き臨時号を発行させて頂きます。メルマガ臨時号のトランプ関税のベトナムへの影響についてお伝えする前に、皆さんにトランプ関税の影響についてアンケートのご協力を。
後段でも記載しておりますが、今回のトランプ関税の影響は既にベトナム国内でも出始めている中で、御社や御社業界で起きていることなどご回答いただけますと動画の内容もより充実しますのでご協力をお願い申し上げます。
https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSfdudhARsfomjDui7hpcVIRDqQIF-VWe1VtiW0SoQptFEQ53A/viewform?usp=header
4月2日に発表されたトランプ大統領による相互関税の影響でこの1週間、株式市場だけでなく世界経済が振り回される1週間になりました。特にベトナムにおいては46%の関税ということになり、この税率を課されてしまうとアメリカ向けの輸出ビジネスは成り立たなくなるということで、株式市場も4営業日連続でほぼ前面ストップ安で約17%ほどの値下がりとなりました。政府としていち早くこの事態に対応するために4月4日夜には世界に先駆けて電話会談を行うことになり、トーラム書記長、チン首相等ベトナム首脳陣がトランプ大統領にアメリカからの輸入品の関税0%受け入れの用意並びに、自由貿易協定の締結を求めたところ、トランプ大統領側の方もかなり好意的にこの申し出を受け入れるという運びになりました。
4月5日からはフック副首相がアメリカ入りし、実務者協議を行うことになったものの、関税撤廃は9日までには間に合わず、ベトナム政府側も何とか45日程度の関税猶予期間を求めるという中で、9日にようやく実務者協議開始にこぎつけたのですが、その日にトランプ大統領より中国を除く特別関税国対象国への関税は90日延期(10%は継続)するという、完全にトランプ大統領に振り回されるような状態となっております。
前回のメルマガでもお伝えしました通り、ベトナムは対アメリカで完全な輸出超過状態であり23年で
輸出1366億USD
輸入131億USD
で差額1235億USDの輸出超過となっており、これは中国2954億USD、EU2355億USD、メキシコ1718億USDに次ぐ4番目(日本は684億USD)の輸出超過額となっております。ただ、自由貿易協定を結んだからといって、輸入額が倍増するかというと、見込みは薄いです。購入可能性のあるものとしては、旅客機、武器、農産物、機械、LNGあたりになりますが、この差額を埋めるのは不可能かと思います。
実務者協議に入る前に、ベトナム国内でもチン首相を座長とした緊急対策会議が開かれていて、その会議での議題などで、アメリカ側がベトナムに何を望んでいるのか?ということも見えてきたのですが、キーワードとしては「対中包囲網へのベトナムの積極参加」です。
特にベトナムに関しては中国の迂回輸出先としてこれまでも中国企業が利用してきたのは事実で、アメリカもこれを徹底して取り締まりたいようです。
早々に電話会談を行ったため、他国と比べてかなり早いタイミングでグリアアメリカ通商代表とフック副首相との実務者協議が開始されたのですが、初回の冒頭にグリア氏の方から迂回輸出についての言及がありました。
https://www.youtube.com/watch?v=q5pfAF1QAeQ
ニュースなどでは貿易詐欺という表現になっているのですが、まさにラベルの貼替え、コンテナ積替えのような、実質メイドインチャイナの品物をメイドインベトナムに変えてのアメリカへの輸出は許さないという姿勢を示しております。
コロナ前にお客様の縫製関係の委託工場を探していた時に、ある中国系工場が他社よりかなり安かった中で、詳細交渉に行った時に、「なぜ、御社はこんなに安いんだ?」みたいなことを聞いたところ、中国で生地を確保して、半製品にしてからこっちに送って云々みたいなことを言ってきて、それではベトナムでの原産地証明出せないのでは?みたいなことを聞いたところ、自分たちは出せる方法知ってるから大丈夫だ、みたいなことを言ってたのですが、今考えるとこれってまさに迂回輸出的な動きをしようとしてたのかもってことなのでしょうね。
具体的にどのように取り締まりしていくのかはまだ分かりませんが、今後の交渉の中で見えてくるのかもしれないので、分かり次第改めてお伝えするようにいたします。
フック副首相からはそれ以外ではアメリカ企業のベトナムへの投資を促進するためのサポートを行うと表明してるのですが、アメリカ企業の投資が増えることで、設備購入などで一時的に輸入は増えるものの、その設備で作られた製品は結局アメリカに輸出されることになるので、貿易赤字はあまり解消しない気がしますが、アメリカ企業にベトナム国内でのビジネスできる機会を提供するということかなと思います。
ただ、既にベトナムでは4月2日以降、アメリカへの出荷ストップや生産の一時停止措置などが発生しております。バリア・ブンタウ省にあるアメリカ向けの下着工場がアメリカからの出荷停止依頼を受け、従業員の半分を自宅休業にしたというのがニュースにも出て話題になっております。また、繊維、木材加工などでは新規の採用募集をストップする動きが出てきており、早期に自由貿易協定がきちんとまとまらないと、不確定要素が多いので、企業が新規設備投資等のリスクを避けようとすることで経済が停滞しそうです。
このベトナムの動きに一番神経を尖らせているのは中国ですが、このタイミングで中国の習近平主席が4月14日、15日とベトナム訪問することが正式発表されました。
https://youtu.be/mswmG5PrVg4
中国側の思惑としては、東南アジア諸国との関係強化による、アメリカへの外交上の孤立を図るものと思われます。世界の覇権国がこれだけ揺れ動いてしまうと、アメリカへの信任が揺らぐのは間違いない中で、東南アジア諸国訪問を通じて、トランプ包囲網をという思惑はあると思います。また、東南アジアとのビジネス促進を通じて、中国そのもののアメリカ依存を下げたいのもあると思います。
そんな中で2025年はベトナムと中国の国交75周年(1950年1月に国交樹立)であり、その関係強化ということで、今回の習近平主席の東南アジア外遊(ベトナム、マレーシア、カンボジア)の最初の訪問国となっています。タイミングがタイミングだけにかなり注目されるものとなりそうです。
ベトナム側もトーラム書記長、クオン国家主席、チン首相、マイン国会議長という4柱と呼ばれるベトナム序列上位4名が会談予定となっておりますので、いかに丁重に今回の来訪を歓迎するのか理解頂けることかと思います。
ベトナムは従来全方位外交(360度外交)と呼ばれるどこか特定の国だけと親しくするというスタンスは取らず、ある種の中立を取ることで上手く世界情勢の中で立ち回ってきたのですが、今回のトランプ関税の一環で、アメリカ側が対中包囲網に加わるように要望してきている中で、緊張関係ではあるものの、大型プロジェクト(ラオカイーハイフォン鉄道)など経済的協力も受けている中国にどのように対応するかというところです。
実際、ベトナムの最大の輸入先は中国であり、2024年も
輸出612億USD
輸入1440億USD
で完全な輸入超過であり、貿易総額が2052億USDとアメリカ(1497億USD)以上に密接なビジネスを行っております。中国から輸入した原料をベトナムで加工してアメリカに輸出するというのは昔からの一つ商流でありますし、実際縫製業界などでは7〜8割程度の原料は中国からというのが今でも続くようです。ただ、前述の通り中国からの輸入品には貿易詐欺と呼べるレベルのようなラベルの貼替えのみ行って中国への輸出しているものも含まれている状態です。
この中国との関係が悪化し、中国からの輸入に強く制限がかかると今度はアメリカ向けの縫製業そのものが成り立たなくなる中で、いかに折り合いをつけるのかが難しいところです。
ただ、トランプ大統領の言うアメリカへの製造企業回帰をということで、アメリカに縫製業や木材加工業が帰ってくるかというと、ただでさえ、人手不足かつ人件費の高いアメリカに縫製業や木材加工業のような労働集約産業が戻れるはずもないというのが実際のところではありますので、対中包囲網で徹底的に中国を叩きつつも、ベトナムのような周辺国とは良好な関係を取って、そこできちんと加工された製品などは関税無しで輸入するというような状態になりそうです。
トランプ関税により、来週以降もベトナムは大きく左右される事態となりそうですので、習近平主席の来訪の結果含めて改めて臨時号を発行しお伝えをしたいと思います。
また、このメルマガ送付を希望されるのであれば、下記URLより登録をお願いいたします。
https://docs.google.com/forms/d/12nccXa-YudtGgrBbkt4jwTReIkZ9vv4YHaK5G13I5Dc/edit?pli=1
今回は以上です。ご覧いただきありがとうございました。
Posted by いのっち at
17:34
│Comments(0)
2025/04/06
トランプ関税のベトナムへの影響について
今回のトランプ関税の影響について、月1メルマガで書いたものをこのブログにも転記いたします。ベトナム情報にご興味あるようなら、
https://docs.google.com/forms/d/12nccXa-YudtGgrBbkt4jwTReIkZ9vv4YHaK5G13I5Dc/edit?pli=1
からご登録をお願いします。
皆様
猪谷です。
こんにちは。
1週間前に送付した月1メルマガ時にも話題に出していたトランプ関税がベトナムに直撃する形となってしまいました。
今回は臨時号という形で、トランプ関税のベトナムへの影響についてお伝えします。
このメルマガを社内の同僚や知人等にも配信希望の場合は、下記URLより申し込みをお願い申し上げます。
https://docs.google.com/forms/d/12nccXa-YudtGgrBbkt4jwTReIkZ9vv4YHaK5G13I5Dc/edit?pli=1
また、ベトナム視察やワークパーミット取得、ライセンス変更等の手続きなどございましたら、弊社にもぜひお声がけくださいませ。
第1次トランプ政権時代より、ポストチャイナということで、中国企業、中国で生産を行っていたグローバル企業が続々とベトナムに生産移管を行い、ベトナムは中国の迂回輸出先であるということでアメリカからも目をつけられている状態ではあったものの、第2次トランプ政権発足間もない時期にメキシコ、カナダ、中国が関税対象となった中で、ベトナムはリストには加わらなかったため、対中ということを意識した中でベトナムへの一定の配慮を示しているのではないかというのが専門家たちの見立てでした。
ただ、いつ、どのような形でベトナムも関税対象となるかわからないということで、後述しますがベトナム政府も様々な対策を取ってきました。
というのも、ベトナムーアメリカの貿易状況は完全にベトナムの輸出超過(アメリカの輸入超過)となっており、23年で
輸出1366億USD
輸入131億USD
で差額1235億USDの輸出超過となっており、これは中国2954億USD、EU2355億USD、メキシコ1718億USDに次ぐ4番目(日本は684億USD)の輸出超過額となっており、この状況をトランプ大統領は見逃すだろうか?と不安視されていました。
そのため、ベトナム政府も様々な対策を打っており、3月上旬にはチン首相が立て続けにアメリカ大手企業のベトナムあるいはASEAN代表者との面談を行い、航空機、武器、LNG、農産物、医薬品の積極輸入及び、アメリカ企業のベトナム投資を支援することを表明したり、
スペースXのベトナムでの事業活動を支援、トランプ大統領のプライベート企業の代表者とは個別面談まで行って、ベトナムでのリゾート開発プロジェクトの全面支援を表明したりしておりました。
https://youtu.be/tCmR4Zp82P0
また、中国との接近を警戒するアメリカに対しての牽制もあるのか、中国製旅客機の導入を前向きに進めるなど、様々な対策を準備していました。
https://youtu.be/cO7JC36FxgQ
ただ、今回の決定はおそらくベトナム政府にとっても想定を上回るものだったというのが実際のところではと思います。
今回、ベトナムは相互関税ということで、46%の関税ということになり、早ければ4月9日より関税適用ということになります。イギリス、シンガポールの10%、日本24%、韓国25%などと比べても遥かに高い金額です(中国は追加34%で従前の20%と合わせて54%)。
今回の46%の関税適用の根拠としては
関税=2国間貿易赤字額÷相手国からの輸入額
ということで、ベトナムの場合
1235億USD÷1366億USD=90.4%ということになり、その約半分ということで46%となった模様です。
前述の通り、近年中国からベトナムへの製造移管が進んだことにより、中国企業、グローバル企業でアメリカ向けに輸出するものをベトナムで製造する企業は多く、例えば靴業界の履物・履物貿易協会(FDRA)のデータによると、2023年に米国に輸入される履物の約3分の1はベトナムから来ているようです。また、ナイキも靴製品の50%、アパレル製品の25%はベトナムで製造していると言われており、今回の発表後4月3日には株価が一気に14%値下がりし、ベトナムの打撃もさることながら、アメリカの消費者にとってもかなりのダメージになることが予想されます。
実際、ベトナムのアメリカ向け輸出品目は
コンピューターおよび部品232億USD (19.4%)
機械および設備220億USD(18.5%)
繊維162億USD(13.5%)
携帯電話98億USD
木材90億USD
靴83億USD
というのが主なところで、それ以外で農産物などでは
カシューナッツは 11.5億USD 、コーヒー3.2億USD、魚介類18.3億USD、野菜3.6億USD
などが主要な輸出産品です。農産物はベトナム国内企業や農家などへも大きなダメージになるため、ベトナム全体に大きな影響が及ぶことが予想されます。
今回の発表を受けチン首相が「ベトナムは目標としている25年8%GDP成長を維持する」という声明を発表したのですが、専門家たちの見立てでは0.99〜5%程度のマイナス予想となっていて、リーマンショック、コロナパンデミック並のダメージすら予想される展開となっておりました。
この影響を最小限に食い止めるには、もはやトランプ大統領との緊急協議しかないということで、リー・クアンユー公共大学の公共政策学部クアン教授なども、アメリカとの2国間自由貿易協定を今すぐ合意するしか無いということを提言しており、ベトナム政府もソン副首相を中心とした緊急対策チームの設置(4月3日)、フック副首相が4月5日にアメリカに緊急派遣し、協議を行うということが発表(4月4日)されておりました。
そんな最中にトー・ラム書記長、チン首相などベトナム政府首脳陣が4日夜にトランプ大統領と緊急電話会談を行いました。
https://www.youtube.com/watch?v=d5WiD8igu1s
今回の相互関税発表を受けて各国首脳がトランプ大統領との直接の話し合いを望んでいる中で、電話会談とはいえ一番乗りで会談を行ったというのは異例のことでありますし、ベトナム政府首脳の行動力の速さは称賛されるべきものかと思います。
会談の中身の詳細は動画を視聴いただければと思いますが、ベトナム側よりアメリカからの輸入品関税0%にする交渉を行うこと、この合意を具体化するため2国間自由貿易協定に署名することを確認したということで、4月5日からのソン副首相による実務者協議に伴う4月9日までの進展次第では相互関税の大幅引き下げや免除の可能性も出てきました。
ただ、相手はトランプ大統領ですので完全に合意するまで余談を許さない状況ではありますので、今後の推移を注視したいところです。
今回は現在のところまでのトランプ関税の背景及び発表後の推移についてお伝えさせて頂きました。また、大きな変化が発生した場合には再度の臨時号という形でお伝えさせて頂きます。
また、4月21日(月)に久々のオフ会も開催予定ですので、別途ご案内メールを送りますが、参加希望の方はこのメールに返信をお願いします。
https://docs.google.com/forms/d/12nccXa-YudtGgrBbkt4jwTReIkZ9vv4YHaK5G13I5Dc/edit?pli=1
からご登録をお願いします。
皆様
猪谷です。
こんにちは。
1週間前に送付した月1メルマガ時にも話題に出していたトランプ関税がベトナムに直撃する形となってしまいました。
今回は臨時号という形で、トランプ関税のベトナムへの影響についてお伝えします。
このメルマガを社内の同僚や知人等にも配信希望の場合は、下記URLより申し込みをお願い申し上げます。
https://docs.google.com/forms/d/12nccXa-YudtGgrBbkt4jwTReIkZ9vv4YHaK5G13I5Dc/edit?pli=1
また、ベトナム視察やワークパーミット取得、ライセンス変更等の手続きなどございましたら、弊社にもぜひお声がけくださいませ。
第1次トランプ政権時代より、ポストチャイナということで、中国企業、中国で生産を行っていたグローバル企業が続々とベトナムに生産移管を行い、ベトナムは中国の迂回輸出先であるということでアメリカからも目をつけられている状態ではあったものの、第2次トランプ政権発足間もない時期にメキシコ、カナダ、中国が関税対象となった中で、ベトナムはリストには加わらなかったため、対中ということを意識した中でベトナムへの一定の配慮を示しているのではないかというのが専門家たちの見立てでした。
ただ、いつ、どのような形でベトナムも関税対象となるかわからないということで、後述しますがベトナム政府も様々な対策を取ってきました。
というのも、ベトナムーアメリカの貿易状況は完全にベトナムの輸出超過(アメリカの輸入超過)となっており、23年で
輸出1366億USD
輸入131億USD
で差額1235億USDの輸出超過となっており、これは中国2954億USD、EU2355億USD、メキシコ1718億USDに次ぐ4番目(日本は684億USD)の輸出超過額となっており、この状況をトランプ大統領は見逃すだろうか?と不安視されていました。
そのため、ベトナム政府も様々な対策を打っており、3月上旬にはチン首相が立て続けにアメリカ大手企業のベトナムあるいはASEAN代表者との面談を行い、航空機、武器、LNG、農産物、医薬品の積極輸入及び、アメリカ企業のベトナム投資を支援することを表明したり、
スペースXのベトナムでの事業活動を支援、トランプ大統領のプライベート企業の代表者とは個別面談まで行って、ベトナムでのリゾート開発プロジェクトの全面支援を表明したりしておりました。
https://youtu.be/tCmR4Zp82P0
また、中国との接近を警戒するアメリカに対しての牽制もあるのか、中国製旅客機の導入を前向きに進めるなど、様々な対策を準備していました。
https://youtu.be/cO7JC36FxgQ
ただ、今回の決定はおそらくベトナム政府にとっても想定を上回るものだったというのが実際のところではと思います。
今回、ベトナムは相互関税ということで、46%の関税ということになり、早ければ4月9日より関税適用ということになります。イギリス、シンガポールの10%、日本24%、韓国25%などと比べても遥かに高い金額です(中国は追加34%で従前の20%と合わせて54%)。
今回の46%の関税適用の根拠としては
関税=2国間貿易赤字額÷相手国からの輸入額
ということで、ベトナムの場合
1235億USD÷1366億USD=90.4%ということになり、その約半分ということで46%となった模様です。
前述の通り、近年中国からベトナムへの製造移管が進んだことにより、中国企業、グローバル企業でアメリカ向けに輸出するものをベトナムで製造する企業は多く、例えば靴業界の履物・履物貿易協会(FDRA)のデータによると、2023年に米国に輸入される履物の約3分の1はベトナムから来ているようです。また、ナイキも靴製品の50%、アパレル製品の25%はベトナムで製造していると言われており、今回の発表後4月3日には株価が一気に14%値下がりし、ベトナムの打撃もさることながら、アメリカの消費者にとってもかなりのダメージになることが予想されます。
実際、ベトナムのアメリカ向け輸出品目は
コンピューターおよび部品232億USD (19.4%)
機械および設備220億USD(18.5%)
繊維162億USD(13.5%)
携帯電話98億USD
木材90億USD
靴83億USD
というのが主なところで、それ以外で農産物などでは
カシューナッツは 11.5億USD 、コーヒー3.2億USD、魚介類18.3億USD、野菜3.6億USD
などが主要な輸出産品です。農産物はベトナム国内企業や農家などへも大きなダメージになるため、ベトナム全体に大きな影響が及ぶことが予想されます。
今回の発表を受けチン首相が「ベトナムは目標としている25年8%GDP成長を維持する」という声明を発表したのですが、専門家たちの見立てでは0.99〜5%程度のマイナス予想となっていて、リーマンショック、コロナパンデミック並のダメージすら予想される展開となっておりました。
この影響を最小限に食い止めるには、もはやトランプ大統領との緊急協議しかないということで、リー・クアンユー公共大学の公共政策学部クアン教授なども、アメリカとの2国間自由貿易協定を今すぐ合意するしか無いということを提言しており、ベトナム政府もソン副首相を中心とした緊急対策チームの設置(4月3日)、フック副首相が4月5日にアメリカに緊急派遣し、協議を行うということが発表(4月4日)されておりました。
そんな最中にトー・ラム書記長、チン首相などベトナム政府首脳陣が4日夜にトランプ大統領と緊急電話会談を行いました。
https://www.youtube.com/watch?v=d5WiD8igu1s
今回の相互関税発表を受けて各国首脳がトランプ大統領との直接の話し合いを望んでいる中で、電話会談とはいえ一番乗りで会談を行ったというのは異例のことでありますし、ベトナム政府首脳の行動力の速さは称賛されるべきものかと思います。
会談の中身の詳細は動画を視聴いただければと思いますが、ベトナム側よりアメリカからの輸入品関税0%にする交渉を行うこと、この合意を具体化するため2国間自由貿易協定に署名することを確認したということで、4月5日からのソン副首相による実務者協議に伴う4月9日までの進展次第では相互関税の大幅引き下げや免除の可能性も出てきました。
ただ、相手はトランプ大統領ですので完全に合意するまで余談を許さない状況ではありますので、今後の推移を注視したいところです。
今回は現在のところまでのトランプ関税の背景及び発表後の推移についてお伝えさせて頂きました。また、大きな変化が発生した場合には再度の臨時号という形でお伝えさせて頂きます。
また、4月21日(月)に久々のオフ会も開催予定ですので、別途ご案内メールを送りますが、参加希望の方はこのメールに返信をお願いします。
Posted by いのっち at
12:09
│Comments(0)