2025/04/06
トランプ関税のベトナムへの影響について
今回のトランプ関税の影響について、月1メルマガで書いたものをこのブログにも転記いたします。ベトナム情報にご興味あるようなら、
https://docs.google.com/forms/d/12nccXa-YudtGgrBbkt4jwTReIkZ9vv4YHaK5G13I5Dc/edit?pli=1
からご登録をお願いします。
皆様
猪谷です。
こんにちは。
1週間前に送付した月1メルマガ時にも話題に出していたトランプ関税がベトナムに直撃する形となってしまいました。
今回は臨時号という形で、トランプ関税のベトナムへの影響についてお伝えします。
このメルマガを社内の同僚や知人等にも配信希望の場合は、下記URLより申し込みをお願い申し上げます。
https://docs.google.com/forms/d/12nccXa-YudtGgrBbkt4jwTReIkZ9vv4YHaK5G13I5Dc/edit?pli=1
また、ベトナム視察やワークパーミット取得、ライセンス変更等の手続きなどございましたら、弊社にもぜひお声がけくださいませ。
第1次トランプ政権時代より、ポストチャイナということで、中国企業、中国で生産を行っていたグローバル企業が続々とベトナムに生産移管を行い、ベトナムは中国の迂回輸出先であるということでアメリカからも目をつけられている状態ではあったものの、第2次トランプ政権発足間もない時期にメキシコ、カナダ、中国が関税対象となった中で、ベトナムはリストには加わらなかったため、対中ということを意識した中でベトナムへの一定の配慮を示しているのではないかというのが専門家たちの見立てでした。
ただ、いつ、どのような形でベトナムも関税対象となるかわからないということで、後述しますがベトナム政府も様々な対策を取ってきました。
というのも、ベトナムーアメリカの貿易状況は完全にベトナムの輸出超過(アメリカの輸入超過)となっており、23年で
輸出1366億USD
輸入131億USD
で差額1235億USDの輸出超過となっており、これは中国2954億USD、EU2355億USD、メキシコ1718億USDに次ぐ4番目(日本は684億USD)の輸出超過額となっており、この状況をトランプ大統領は見逃すだろうか?と不安視されていました。
そのため、ベトナム政府も様々な対策を打っており、3月上旬にはチン首相が立て続けにアメリカ大手企業のベトナムあるいはASEAN代表者との面談を行い、航空機、武器、LNG、農産物、医薬品の積極輸入及び、アメリカ企業のベトナム投資を支援することを表明したり、
スペースXのベトナムでの事業活動を支援、トランプ大統領のプライベート企業の代表者とは個別面談まで行って、ベトナムでのリゾート開発プロジェクトの全面支援を表明したりしておりました。
https://youtu.be/tCmR4Zp82P0
また、中国との接近を警戒するアメリカに対しての牽制もあるのか、中国製旅客機の導入を前向きに進めるなど、様々な対策を準備していました。
https://youtu.be/cO7JC36FxgQ
ただ、今回の決定はおそらくベトナム政府にとっても想定を上回るものだったというのが実際のところではと思います。
今回、ベトナムは相互関税ということで、46%の関税ということになり、早ければ4月9日より関税適用ということになります。イギリス、シンガポールの10%、日本24%、韓国25%などと比べても遥かに高い金額です(中国は追加34%で従前の20%と合わせて54%)。
今回の46%の関税適用の根拠としては
関税=2国間貿易赤字額÷相手国からの輸入額
ということで、ベトナムの場合
1235億USD÷1366億USD=90.4%ということになり、その約半分ということで46%となった模様です。
前述の通り、近年中国からベトナムへの製造移管が進んだことにより、中国企業、グローバル企業でアメリカ向けに輸出するものをベトナムで製造する企業は多く、例えば靴業界の履物・履物貿易協会(FDRA)のデータによると、2023年に米国に輸入される履物の約3分の1はベトナムから来ているようです。また、ナイキも靴製品の50%、アパレル製品の25%はベトナムで製造していると言われており、今回の発表後4月3日には株価が一気に14%値下がりし、ベトナムの打撃もさることながら、アメリカの消費者にとってもかなりのダメージになることが予想されます。
実際、ベトナムのアメリカ向け輸出品目は
コンピューターおよび部品232億USD (19.4%)
機械および設備220億USD(18.5%)
繊維162億USD(13.5%)
携帯電話98億USD
木材90億USD
靴83億USD
というのが主なところで、それ以外で農産物などでは
カシューナッツは 11.5億USD 、コーヒー3.2億USD、魚介類18.3億USD、野菜3.6億USD
などが主要な輸出産品です。農産物はベトナム国内企業や農家などへも大きなダメージになるため、ベトナム全体に大きな影響が及ぶことが予想されます。
今回の発表を受けチン首相が「ベトナムは目標としている25年8%GDP成長を維持する」という声明を発表したのですが、専門家たちの見立てでは0.99〜5%程度のマイナス予想となっていて、リーマンショック、コロナパンデミック並のダメージすら予想される展開となっておりました。
この影響を最小限に食い止めるには、もはやトランプ大統領との緊急協議しかないということで、リー・クアンユー公共大学の公共政策学部クアン教授なども、アメリカとの2国間自由貿易協定を今すぐ合意するしか無いということを提言しており、ベトナム政府もソン副首相を中心とした緊急対策チームの設置(4月3日)、フック副首相が4月5日にアメリカに緊急派遣し、協議を行うということが発表(4月4日)されておりました。
そんな最中にトー・ラム書記長、チン首相などベトナム政府首脳陣が4日夜にトランプ大統領と緊急電話会談を行いました。
https://www.youtube.com/watch?v=d5WiD8igu1s
今回の相互関税発表を受けて各国首脳がトランプ大統領との直接の話し合いを望んでいる中で、電話会談とはいえ一番乗りで会談を行ったというのは異例のことでありますし、ベトナム政府首脳の行動力の速さは称賛されるべきものかと思います。
会談の中身の詳細は動画を視聴いただければと思いますが、ベトナム側よりアメリカからの輸入品関税0%にする交渉を行うこと、この合意を具体化するため2国間自由貿易協定に署名することを確認したということで、4月5日からのソン副首相による実務者協議に伴う4月9日までの進展次第では相互関税の大幅引き下げや免除の可能性も出てきました。
ただ、相手はトランプ大統領ですので完全に合意するまで余談を許さない状況ではありますので、今後の推移を注視したいところです。
今回は現在のところまでのトランプ関税の背景及び発表後の推移についてお伝えさせて頂きました。また、大きな変化が発生した場合には再度の臨時号という形でお伝えさせて頂きます。
また、4月21日(月)に久々のオフ会も開催予定ですので、別途ご案内メールを送りますが、参加希望の方はこのメールに返信をお願いします。
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猪谷です。
こんにちは。
1週間前に送付した月1メルマガ時にも話題に出していたトランプ関税がベトナムに直撃する形となってしまいました。
今回は臨時号という形で、トランプ関税のベトナムへの影響についてお伝えします。
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第1次トランプ政権時代より、ポストチャイナということで、中国企業、中国で生産を行っていたグローバル企業が続々とベトナムに生産移管を行い、ベトナムは中国の迂回輸出先であるということでアメリカからも目をつけられている状態ではあったものの、第2次トランプ政権発足間もない時期にメキシコ、カナダ、中国が関税対象となった中で、ベトナムはリストには加わらなかったため、対中ということを意識した中でベトナムへの一定の配慮を示しているのではないかというのが専門家たちの見立てでした。
ただ、いつ、どのような形でベトナムも関税対象となるかわからないということで、後述しますがベトナム政府も様々な対策を取ってきました。
というのも、ベトナムーアメリカの貿易状況は完全にベトナムの輸出超過(アメリカの輸入超過)となっており、23年で
輸出1366億USD
輸入131億USD
で差額1235億USDの輸出超過となっており、これは中国2954億USD、EU2355億USD、メキシコ1718億USDに次ぐ4番目(日本は684億USD)の輸出超過額となっており、この状況をトランプ大統領は見逃すだろうか?と不安視されていました。
そのため、ベトナム政府も様々な対策を打っており、3月上旬にはチン首相が立て続けにアメリカ大手企業のベトナムあるいはASEAN代表者との面談を行い、航空機、武器、LNG、農産物、医薬品の積極輸入及び、アメリカ企業のベトナム投資を支援することを表明したり、
スペースXのベトナムでの事業活動を支援、トランプ大統領のプライベート企業の代表者とは個別面談まで行って、ベトナムでのリゾート開発プロジェクトの全面支援を表明したりしておりました。
https://youtu.be/tCmR4Zp82P0
また、中国との接近を警戒するアメリカに対しての牽制もあるのか、中国製旅客機の導入を前向きに進めるなど、様々な対策を準備していました。
https://youtu.be/cO7JC36FxgQ
ただ、今回の決定はおそらくベトナム政府にとっても想定を上回るものだったというのが実際のところではと思います。
今回、ベトナムは相互関税ということで、46%の関税ということになり、早ければ4月9日より関税適用ということになります。イギリス、シンガポールの10%、日本24%、韓国25%などと比べても遥かに高い金額です(中国は追加34%で従前の20%と合わせて54%)。
今回の46%の関税適用の根拠としては
関税=2国間貿易赤字額÷相手国からの輸入額
ということで、ベトナムの場合
1235億USD÷1366億USD=90.4%ということになり、その約半分ということで46%となった模様です。
前述の通り、近年中国からベトナムへの製造移管が進んだことにより、中国企業、グローバル企業でアメリカ向けに輸出するものをベトナムで製造する企業は多く、例えば靴業界の履物・履物貿易協会(FDRA)のデータによると、2023年に米国に輸入される履物の約3分の1はベトナムから来ているようです。また、ナイキも靴製品の50%、アパレル製品の25%はベトナムで製造していると言われており、今回の発表後4月3日には株価が一気に14%値下がりし、ベトナムの打撃もさることながら、アメリカの消費者にとってもかなりのダメージになることが予想されます。
実際、ベトナムのアメリカ向け輸出品目は
コンピューターおよび部品232億USD (19.4%)
機械および設備220億USD(18.5%)
繊維162億USD(13.5%)
携帯電話98億USD
木材90億USD
靴83億USD
というのが主なところで、それ以外で農産物などでは
カシューナッツは 11.5億USD 、コーヒー3.2億USD、魚介類18.3億USD、野菜3.6億USD
などが主要な輸出産品です。農産物はベトナム国内企業や農家などへも大きなダメージになるため、ベトナム全体に大きな影響が及ぶことが予想されます。
今回の発表を受けチン首相が「ベトナムは目標としている25年8%GDP成長を維持する」という声明を発表したのですが、専門家たちの見立てでは0.99〜5%程度のマイナス予想となっていて、リーマンショック、コロナパンデミック並のダメージすら予想される展開となっておりました。
この影響を最小限に食い止めるには、もはやトランプ大統領との緊急協議しかないということで、リー・クアンユー公共大学の公共政策学部クアン教授なども、アメリカとの2国間自由貿易協定を今すぐ合意するしか無いということを提言しており、ベトナム政府もソン副首相を中心とした緊急対策チームの設置(4月3日)、フック副首相が4月5日にアメリカに緊急派遣し、協議を行うということが発表(4月4日)されておりました。
そんな最中にトー・ラム書記長、チン首相などベトナム政府首脳陣が4日夜にトランプ大統領と緊急電話会談を行いました。
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今回の相互関税発表を受けて各国首脳がトランプ大統領との直接の話し合いを望んでいる中で、電話会談とはいえ一番乗りで会談を行ったというのは異例のことでありますし、ベトナム政府首脳の行動力の速さは称賛されるべきものかと思います。
会談の中身の詳細は動画を視聴いただければと思いますが、ベトナム側よりアメリカからの輸入品関税0%にする交渉を行うこと、この合意を具体化するため2国間自由貿易協定に署名することを確認したということで、4月5日からのソン副首相による実務者協議に伴う4月9日までの進展次第では相互関税の大幅引き下げや免除の可能性も出てきました。
ただ、相手はトランプ大統領ですので完全に合意するまで余談を許さない状況ではありますので、今後の推移を注視したいところです。
今回は現在のところまでのトランプ関税の背景及び発表後の推移についてお伝えさせて頂きました。また、大きな変化が発生した場合には再度の臨時号という形でお伝えさせて頂きます。
また、4月21日(月)に久々のオフ会も開催予定ですので、別途ご案内メールを送りますが、参加希望の方はこのメールに返信をお願いします。
Posted by いのっち at 12:09│Comments(0)